現場監督のAI:COOという役

2026-07-16

複数の役職を並べて仕事を進める設計にすると、最初にぶつかる問題は技術的なものではありません。「誰が、どの順番で、何を承認するか」という、地味だが避けて通れない問題です。

初期の設計では、承認をひとつの窓口に集める形をとっていました。各役職から出てくる提案や進行状況を、すべて同じ場所に集めて確認する。仕組みとしては分かりやすく、記録も一元化できるという利点がありました。

ただ、実際に動かしてみると、別の問題が見えてきました。案件が増えるほど、その一箇所に承認待ちが積み上がっていきます。承認待ちの間、関わっている他の役職の作業も止まる。急ぎでない案件と急ぎの案件が同じ列に並び、優先順位のつけ方がその場しのぎになっていく。誰も間違ったことはしていないのに、全体の進み方だけがじわじわ遅くなっていく。目に見える事故ではなく、少しずつ滞りが積もっていくこの状態を、この連載では「静かなる崩壊」と呼んでいます。

現場監督という役を切り出す

この状態を放置しないために立てたのが、COO(組織の日々の運営を仕切る役職を指す言葉)です。工事現場に例えるなら、設計図を描く人でも最終決裁をする人でもなく、その日の作業をどの順番で進めるかを仕切る現場監督にあたります。

COOの仕事は、大きく分けると二つあります。ひとつは部門横断の優先順位づけ(複数の役職から出てきた案件を、どれから片付けるか順番を決めること)。もうひとつは進行管理(決めた順番どおりに物事が実際に動いているか、途中で詰まっている箇所はないかを見ること)です。

重い決定そのものをCOOが下すわけではありません。重い判断は、これまでの部で見てきた諮問の仕組みに乗せます。COOが担っているのは、その手前の交通整理です。どの案件を先に諮問へ回すか、どの案件は軽い確認で済ませてよいか。この仕分けをする役です。

承認の一点集中を、もう一度作らない

ここで、気をつけておきたい点があります。承認をひとつの窓口に集めていたことが「静かなる崩壊」の原因だったのなら、その窓口をCOOに置き換えても、同じ問題を場所を変えて再現するだけです。今度はCOO自身が、すべての案件を仲介する新しいボトルネック(流れが一箇所に集中して滞ってしまうことを指す言葉)になりかねません。

これを避けるために、COOには二つの制約を置いています。ひとつは、COOが最終判断そのものを持たないことです。仕分けと進行管理はするが、内容の可否は各役職の諮問に委ねる。もうひとつは、仕分けの基準をあらかじめルール化しておくことです。案件ごとにCOOがその都度判断するのではなく、重さや影響範囲に応じてどの経路に乗せるかを決めておく。基準が決まっていれば、COOが不在でも詰まりにくくなります。

目立たないが、止まると分かる役

現場監督の役目は、うまく回っているときほど意識されにくいものです。ただ、動かしてみて分かったのは、この地味な交通整理がないと、他のどの役職がどれだけ良い判断をしても、その判断が現場に届くまでの時間がじわじわと伸びていく、ということでした。

COOという役職は、判断の質を上げるための役ではありません。判断が生まれてから実際に動き出すまでの距離を、できるだけ短く保つための役です。承認を一箇所に集めない、かといって仕切る人を置かなければ何も進まない。その間を取る設計として、この役を切り出しています。

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