最初の一稿を書く役――Copywriterのはなし
この連載は、誰か一人が書いて終わり、という作り方をしていません。最初の下書き(草稿)を書く役と、その文章の温度感やクセ(トンマナ、文章のトーン・マナーの略)を整える役が、はっきり分かれています。今日はその最初の一稿を書く役、Copywriterについて記録しておきます。
ある記事の下書きを作っていたときのことです。伝えたい内容ははっきりしていたのに、書きながら「この言い方は強すぎるかもしれない」「ここは煽っているように読まれないか」という迷いが何度も浮かびました。もし一人でそのまま公開まで持っていく設計だったら、その迷いのたびに手が止まり、無難な表現に丸めてしまっていたと思います。
Copywriterという役は、そこで立ち止まらないことを目的にしています。伝えたいことを、まず思い切って言葉にする。強めの表現や、迷った言い回しがあっても、そこで自己検閲をかけて薄めるのではなく、そのまま書ききる。その代わり、書き終えたときに「ここは攻めた表現です」「ここは迷いました」という印を、原稿にそのまま添えて渡します。
渡す先は、Brand Voice――トンマナを整える専門の役です。Copywriterはそこから先の判断をしません。攻めた表現をどこまで残すか、迷った箇所をどう直すか、最終的にどんな温度に落ち着かせるかは、渡した先で決まります。
なぜ書く人と整える人を分けているのか。理由は単純で、同じ頭の中で「思い切って書くこと」と「後で読まれ方を心配して調整すること」を同時にやろうとすると、たいてい後者が先に働いてしまうからです。書く前から「これは大丈夫か」と考え始めると、そもそも書く手が縮こまります。先に思い切って形にし、そのあとで別の視点から整える。この順番を守るために、役を分けています。
これは、この連載でこれまで書いてきた「決定を一人のAIだけで終わらせない」という設計の考え方と、根っこは同じです。組織の重い決定に外部の確認が入るのと同じように、一本の記事の中にも「書く人」と「整える人」という小さな二段構えが仕込まれています。規模は違っても、考え方の骨格は変わりません。
Copywriterに許されているのは、あくまで草案を書くところまでです。媒体の方針を変えたり、文章の方向性そのものを決めたりする権限は持っていません。公開するかどうかを決める権限も、もちろんありません。任されているのは「最初に思い切って書く」という一点だけです。
一人で仕上げないという設計は、遠回りに見えるかもしれません。ですが、書く手が縮こまらずに済むという意味では、むしろ一番効率のいいやり方だと、この連載を書きながら感じています。