振り分けに徹する交通整理役:Task Dispatcher
依頼はだいたい束になっている
一つの依頼が飛んできたとき、最初に困るのは「これは誰の仕事なのか」という一点。たとえば「新しい記事の構成を考えて、下書きまで用意しておいて」という依頼。一見すると一つの仕事に見えるけど、中身は二つの仕事が束になっている。構成を決めるのは段取りを組む役の持ち場で、下書きを書くのは書く役の持ち場。束のまま誰かに渡すと、渡された側は持ち場を越えて、両方まとめて片づけようとする。そして、だいたいうまくいかない。
Task Dispatcher(届いた依頼を読んで、どの役に渡すかだけを決める役)は、この最初の分岐を専門に受け持つために置いてある。仕事を配る係、交通整理の役。
一つの依頼が二つに割れる場面
さっきの「構成を考えて、下書きまで」を追ってみる。Task Dispatcherがまず読むのは依頼文そのものじゃなくて、そこに含まれてる作業の種類。「構成を考える」は段取りを組む役の持ち場、「下書きを用意する」は書く役の持ち場。二つは似てるようで別の判断が要る。構成は媒体や出す順番を見て決めるもので、下書きは言葉を選んで文章にするもの。
ここで束のまま一人に渡すと、構成が固まる前に下書きが先に動き出したり、逆に構成待ちで下書きがずっと止まったままになったりする。順番が絡む依頼だからこそ、Task Dispatcherは依頼を二つに割って、先に段取りを組む役へ「構成の判断」だけを渡す。構成が固まったという返事が戻ってきて、初めて書く役へ「この構成で下書きを」という形に組み直して渡す。渡した後は手を離して、それぞれの結果を待つだけ。配る役が決めるのは、依頼をどう分けてどの順で渡すかまで。構成の中身にも、文章にも手を出さない。
頭の中で切り替えるのと、担当として分けるのは違う
同じ人が「今は配る頭」「今は書く頭」と意識を切り替えれば済むように思えるかもしれない。ただ、それは実際にはあまり機能しない分け方だと思っている。頭の中で切り替えてるつもりでも、前の役の都合が残る。書く役の視点を持ったまま配る判断をすると、「これは手元で書けそうだから、あとで渡すのは省いてしまおう」という誘惑が生まれる。
物理的に担当を分けておくと、この誘惑そのものが起きない。Task Dispatcherという担当には、そもそも記事を書く手段が与えられていない。書きたくても書けない構造になっているので、迷いようがない。意識の強さに頼るんじゃなくて、できることの範囲そのものを狭めておく。役割を分けるというのは、今のところそういう意味で使っている。権限を絞ることと、役割を絞ることは、たぶん同じ設計の裏表になっている。誘惑が生まれる前に、選択肢そのものを減らしておくという発想に近い。
新人に電話番を任せたら、かかってきた用件を全部自分で解決しようとして本業が止まった、というのに近い話だと思う。受け答えの窓口と、実際に手を動かす担当を最初から別にしておけば、そもそもその誘惑自体が起きない。
分けることのコスト
もちろん、分けることには手間が伴う。一つの依頼を一人で最後まで片づけるより、途中で渡し先を変えて、結果を待って、また次へ渡す方が、手数は確実に増える。
「構成を考えて、下書きまで」が届いた瞬間、Task Dispatcherはまず依頼文を読み解く時間を使う。ここで急いで雑に割ると、渡した先が違う前提で動き出してしまう。構成の判断がまだ固まってないのに、書く役が見切り発車で下書きを進めてしまうような場面。それを防ぐには、構成が戻ってくるまで下書きの依頼を出さずに待つしかない。急ぎの依頼が重なった時期は、この待ちがなおさら重く感じられた。段取りを組む役からの返事がまだ来ていないのに、下書きの依頼だけ先に出してしまいたくなる瞬間があった。
それでも、待つ方を選んでいる。構成が固まる前の下書きは、たいてい構成が決まった時点で書き直しになる。渡した先が違う前提のまま進めてしまうより、待って一度で揃える方が、トータルの手数は少なくて済む設計だと考えている。一人で最後まで抱えていれば、迷いながらでもその場で手は動かし続けられたかもしれないが、それはそれで別のところにしわ寄せが行く選び方だと思う。
それでも分けている理由
それでも分けているのは、その一手のおかげで、あとから見返したときに「誰がどの判断をしたか」が追えるから。構成のずれも、下書きの質のずれも、どの持ち場で起きたのかが分かる。速さより、あとで説明できることを取っている、という選び方に近い。
手数が増える分のコストは、あとから追跡できるという利益と引き換えになっていると考えている。一人で抱えて速く進める設計と、分けて多少遅くても追跡できる設計、どちらも成り立つやり方のはずで、今のところは後者を選んでいる、というだけの話ではある。
派手ではない役だけど、今のところ、この組織で依頼が最初に触れる担当はここになっている。これが唯一のやり方だとは思っていない。