AIエージェントって何?
第10章の最後に、「次の章からは基礎の土台づくりに入る」と書きました。
その最初のテーマは「AIエージェント」です。この連載でずっと使ってきた言葉ですが、意外ときちんと立ち止まって説明していませんでした。今回はこの一語に集中します。
まず素朴な疑問から
AIエージェント(えーじぇんと)という言葉、最近よく目にすると思います。ただ、調べると説明がいくつもあって、どれが自分に関係するのかよくわからない、という感覚はないでしょうか。
私もそうでした。
なので今回は難しい定義より先に、「普通のAIの使い方と、何が違うのか」というところから入ります。
Q. 普通のAIとの違いは何ですか?
普通のAI——たとえばChatGPTやClaudeに「この文章を直して」と頼む使い方——は、「質問したら答えが返ってくる」という一往復で完結します。こちらが入力して、AIが出力する。それで終わりです。
AIエージェントは、この「一往復」という制約を外したものだと考えると分かりやすいです。
指示を受けたら、自分で手順を考えて、複数のステップを連続して実行します。一度の問いかけで終わらず、「調べる→まとめる→次の作業に移る」と動き続けます。
Q. 具体的にどう動くのですか?
例を一つ挙げます。
「この連載の第5章と第7章を読んで、共通するキーワードを3つ抜き出して、それを使った要約を書いて」という指示をしたとします。
普通のAIに頼む場合、手順はこうなります。
- 「第5章と第7章を読んで、共通するキーワードを抜き出して」と頼む
- 結果が返ってくる
- 「それを使った要約を書いて」とまた頼む
- 要約が返ってくる
人間が手順を管理して、その都度次の指示を出しています。
AIエージェントに同じ指示を出すと、エージェントが自分で「まずキーワードを探す」「次に要約を作る」という手順を組み立てて、最後まで実行します。途中で人間が次の一手を考える必要がありません。
Q. もう少し身近な例はありますか?
もう一つ、実際にこのブログで使っている場面を挙げます。
記事を一本書く作業を例にします。
私が指示するのは「第11章の草案を書いて」の一行です。エージェントは、過去の章を読んで文体を確認する、今回のテーマに合った構成を選ぶ、草案を書く、自分でチェックして修正する、という一連を実行します。
私が「次はここを調べて」「次はこう直して」と一つ一つ指示しなくても、エージェントが自分で考えて動きます。
ただ、最終的に「公開する」の判断は人間がします。その仕組みについては、別の章で記録しています。
Q. エージェントは「賢い」のですか?
少し注意が必要な部分です。
エージェントが自分で考えて動く、というのは事実です。ただ、その「考える」は人間の判断とは別物です。
設計した通りに動く、というほうが正確です。何をどういう順番で実行するかは、人間が事前に設計しています。設計の範囲内では自律的(じりつてき)に動きますが、設計を超えた判断は基本的にできません。
「賢い」というより「設計した通りに精巧(せいこう)に動く機械」のイメージに近いです。この感覚が、後の章で話す「誰が設計するか」「誰が最終確認するか」という話に直結します。
Q. この連載での「AIエージェント」の使い方は?
一点だけ、この連載での使い方を明記しておきます。
この連載では「AIエージェント」を「役割を与えられたAIの一単位」という意味で使っています。たとえば「記事を書く担当のAI」「チェックする担当のAI」「最終判断を仰ぐ人間とやりとりするAI」——それぞれが一つのエージェントです。
一般的な技術的定義よりも少し広めの使い方です。「役割を持って動くAI」という理解で読んでいただければ問題ありません。
一語、押さえました
AIエージェントを一言で言うなら、「指示を受けて、手順を自分で組み立てて、複数の作業を連続して実行するAI」です。
質問したら答えが返ってくる、という一往復の使い方と、ここが大きく違います。
この連載でこれから話す「AI組織化」は、複数のエージェントを組み合わせて一つの仕組みを作る話です。まず「一体のエージェントとは何か」のイメージを持っておくことが、その出発点になります。
次の章も同じように、一語ずつ積み上げていきます。